ゲームシナリオとテレビや映画の脚本は違うということ 

 さて、こんなニュースが飛び込んできました。

 ■カプコンがフラグシップを吸収合併(ホコタテブログさん)
  http://hokotate.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_d252.html

 フラグシップという会社は、1997年に当時カプコンの重役であった岡本吉起氏によって作られたカプコンの子会社で、当初の目的は「ゲームシナリオの強化」のために作られたものだったと記憶しています。つまり、ゲームには優れたシナリオが必要になってきているので、ゲームシナリオ専門の会社を設立し、それの強化を図る、といった思想の元に設立されたものでした。

 そしてその後、『バイオハザード』シリーズや『鬼武者』などといったカプコンのタイトル、そして時には任天堂とカプコンが組んで作られたゲームボーイの『ゼルダの伝説 不思議の木の実』シリーズのシナリオまでをも担当しました。
 しかし前述のリンク先情報によると、近年ではシナリオ専門ではなく、『星のカービィ 鏡の大迷宮』や『ファイアーエムブレム 聖魔の光石』などの受託開発(グラフィックやプログラムも)を業務としていたようです。
 そして今回のように、事実上解散してカプコンに吸収される形となったみたいです。


 さて、ここで思うのは「シナリオを重視して、それ専門の会社を作るというのは間違っていたのか」ということです。しかし、私はそのコンセプト自体は間違っていたとは思いません。ただ、このフラグシップの場合、客観的に見えた点だとどうもそのやり方があまりよろしくなかったように感じるのです。

 私がこの会社の設立当初、ゲーム雑誌などのニュースを見て思っていたことがあります。それは「シナリオ専門の会社か。ゲームのシナリオを強化するという考えはいいな」ということ、そして「何でゲームでは聞いたことのない小説家や脚本家ばかりなんだ?」ということです。

 Wikipediaのフラグシップを参照すると、フラグシップに所属していたのは杉村升氏や曽田博久氏といった、主にテレビ(ドラマ、特撮方面)の脚本や小説で活躍して来られた方が多く見受けられます。しかし、肝心のゲームの脚本は、ほとんどの方がそれまでに経験されておられないようです。
 たしかにこれらの方々はテレビ方面では実査期がある方々なので、腕に文句はないでしょう。しかし、「ゲームのシナリオ」に関しては、全くも門外漢だったのではないかと思うのです。

 私が思うにゲームの脚本とアニメやドラマの脚本というのは、似ているように見えて全く異なると思います。というのは、テレビや映画は基本的にユーザーは「観る」だけなのに対し、ゲームの場合、ユーザーは「(操作という)干渉を入れる→観るだけではない」からです。
 テレビや映画の場合、登場人物への感情移入がいるとはいっても、所詮は視聴者は客観的第3者、3人称のような視点から見るのが普通です。しかしゲームの場合はほとんどは「動かすキャラ」というものが存在し、操作するプレイヤーはそのキャラの視点で動かすわけですから、人称もそのキャラにとっても1人称になります。(もちろん例外もありますが)

 その上、ゲームの場合は話が一本道で、結末も1つとは限りません。それこそ、マルチエンディングなんて言うのは山のようにありますし、たとえエンディングがひとつでも、そこに至る道がいくつも必要なんていうのは多数あります。
 ちなみに話は違うのに、全ルートで整合性を取らなければいけないのがかなりめんどいのですね。

 さらに、ゲームの場合いくらストーリーが大事だと言っても、それが全てではありません。ゲームというのは色々な要素が合わさって出来るものであり、ゲームの都合によってはシナリオを変えた方がゲームが面白くなることもあります。例えばAからBに行くときは、ゲーム的にはもう一度Aをやらせたほうが面白いなんてこともあります。しかし、シナリオ的にはそれは冗長だったりするわけで、いらない部分となり、そこで衝突が起きてしまうわけです。
 あと、現実的にそのシナリオを実行するための素材(ダンジョンとか、人物とか)がない、なんて可能性もあります。
 しかし、前述の情報元では、こんなことも書かれていました。

『ゼルダの伝説 ふしぎの木の実』の開発で、シナリオを何よりも第一に考える集団ですから、ゲームの仕様変更に合わせてシナリオを変えることをものすごく嫌がる、というような感じの話を宮本さんがしていました(たぶん)。


 これが本当だったら、それはかみ合わないと思います。

 つまり、フラグシップの敗因は、ゲームシナリオというものの文法をあまりわかっていない人を連れてきてしまったために、結局はシナリオに合わせて(シナリオを優先させて、ゲーム性をそれに合わせるような)ゲームを作るしかなくなってしまったのではないかと思うのです。
 もし、ゲームの現場の事情を知っている人だったら、それに合わせながらも作品が作れたかもしれないと思うのは気のせいではないでしょう。というか、今でも内部でシナリオを書いているケースが多いのは、そういう「ゲーム制作現場の事情」を知っている人のほうがありがたいからかも。というか、それはフラグシップ設立以前から……

 しかし、テレビの脚本家としては優秀な人を揃えただけに、これはお互いにとって不幸だったように思えます。かなり有能な仲介人(ディレクター)でもいれば、また話は変わってきたのでしょうが……

 ちなみにもし本当にテレビや映画の脚本に近い形でゲームを作るなら、『かまいたちの夜』のようなサウンドノベルくらい、読むとか観るとかに特化しないといけない気がします。(とはいっても、あれもただの小説ではなく、ゲーム的にいろいろ工夫されている文章だと思うのですけどね)


 以上、なんか否定的なことばかり書いてきましたが、ゲームシナリオ会社という発想自体は間違っていたとは思いません。シナリオ専門の会社でしたら、月光などいろんな会社が(他の媒体との兼業にせよ)ちゃんと存在しているのですから。
 ま、とりあえずゲームシナリオの位置がもうちょっと上がればいいなあ……などと思いました。
 

  
ブックマークに追加する このエントリーを含むはてなブックマーク
[ 2007/04/20 23:59 ] コラム | TB(1) | CM(5)
確かナムコの鉄拳4はストーリーを映画の脚本を書くスタジオに依頼したらしいですが、正直「必要ない」と思いましたね。格闘ゲームに。結局やってることはボコスカ殴りあって、EDでちろっとストーリーめいたものが出る程度。SNKもKOFシリーズでアホみたいに毎回ドラマ設定してましたけど、会社内によくいる「設定房」じゃないかと。どんなジャンルでもストーリーを入れたがる、入れるとゲームに深みが出ると勘違いしている人間が。
 アドベンチャーやRPGなら重要な要素ですけど、アクションゲームに凝ったシナリオを入れてもねえ。かえって自由な発想の制約(シナリオと辻褄があわないから、という理由で)になりそうな気がします。
[ 2007/04/23 18:42 ] [ 編集 ]
なんとなくわかりそうな話ですけど、確実なソースがないぶん推測の域を出ないから、なんとも判断しがたいですね・・・。

製作者や関係者の言質とかどこかに落ちてないのかな?
[ 2007/04/23 23:18 ] [ 編集 ]
>最初のNO NAMEさん
こんにちは。
>鉄拳4
あら、知りませんでした。
まあ言われてみれば確かになんか3にはないシリアスな空気がありましたね。
だけど、それ故に鉄拳シリーズであるおふざけ感(特にポールとかクマとか)が薄くなっていたのは個人的に残念でした。

格ゲーのストーリーは、ユーザーに設定を望む人もいるので一概に賛否は判断できないですが、無理っぽいものならないほうがいいかなとも思います。
ちなみに餓狼シリーズだと、ギースは生きかえりすぎだと思います。(ゲーメストのマンガはかなりうまくまとめてましたけどね)


>2番目のNO NAMEさん
こんにちは。
そうですね、さすがにご本人達に来たわけではないですから、推測の域は出ません。
ただ、経験上小説とゲームでは全然文法が違いますね。
中でも、「分岐」の存在は、それ以後で整合性を整えるのには、かなり苦労がいると思います。
[ 2007/04/25 02:46 ] [ 編集 ]
うろ覚えですが、確か弟切草蘇生篇の
公式ガイドブックに収録の
「弟切草」脚本・監修の長坂秀佳さんの
インタビューで、
ゲームを意識した脚本を書いていることを
はっきり名言されていたと思います。

おなじくチュンソフト「かまいたちの夜」
脚本の我孫子武丸さんにしても、
相当のゲームマニアであり、ゲームの中で
なにが脚本に求められているかを
熟知した上での執筆だったようです。
http://plusd.itmedia.co.jp/games/articles/0607/26/news062.html

「学校であった怖い話」の飯島健男さんも
サウンドノベルというゲームでどんな
ジャンルがゲーム性を持たせやすいか、
考えた結果ホラーを選択したと、
ガイドブックの
「学校であった怖い話の怖い話」で
語っています。

以上挙げた3名は、具体的には、
一画面の文章量、分岐を出すタイミング、
疲れずに読ませるための文章、
繰り返し読むことのできる文章や分岐、
背景や音楽、SEとのバランスを
意識した脚本を仕上げています。

ゲームの特性をよく理解した上で
脚本を執筆する人材が求められるという
ことだと思います。
[ 2007/04/25 17:54 ] [ 編集 ]
>のなめさん
こんにちは
長坂秀佳さんは『街』でもかなり複雑なシナリオを巧みに設定して良作としていましたね。
あと、飯島さんは明らかにゲーム業界のほうが本来の土壌ってくらいこっちのことをわかっている気がします。

もしかしたらこれらチュンソフトの成功例があったためにフラグシップも設立されたかもしれません。しかし、ここに所属されていた方がこの3方のように「ゲームの文法」を知り尽くしていたのかは外からはわからないですが、知らなかったらちょっとコンセプトがずれていたかなあって感じです。

>一画面の文章量、分岐を出すタイミング、
>疲れずに読ませるための文章、
>繰り返し読むことのできる文章や分岐、
>背景や音楽、SEとのバランス
まさしくこの通りで、ゲームには他のジャンルとは違った面で話を作る上でもいろいろ気を遣うことがあると思います。
[ 2007/04/26 13:12 ] [ 編集 ]
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
この記事のトラックバックURL
http://gamemusic.blog50.fc2.com/tb.php/369-d3742b37

どうも、再開すると言いながらまた放置の日々が続いておりました。 私がこのブログを休んでいた理由は、もちろん忙しかったということもあるんですが、実を言うともうひとつ大きな原因がありました。 それは、自分にとって「良いゲームミュージック」とはどういうものなの
関連サイト

ゲームミュージックなブログ(ミラーサイト)
 …念のためのミラー。ただしこっちのバックアップを定期的に移しているので、更新遅いです。

空気を読まない中杜カズサ
 …マンガとかSFとかよろず戯言。自分でもなんだかよくわからなくなってきている。

ゲームミュージックなブログ・SIDE B
 …ギャルゲー音楽、同人音楽系を中心になんてもあり。

Timesteps
 …ニュースのそれからと日本インターネットの歴史。

■???
 …謎の企画その1(GM方面)。制作中

プロフィール

Author:中杜カズサ

職業:ライター
一言:『人間万事塞翁が馬』が座右の銘な(自称)無名ライター。
 好きな言葉は『枯れた技術の水平思考』。
 役に立つ技術や知識浅く広くで、どれもが不足気味なのに悩む今日この頃。
 いろいろお仕事募集中。
 

カレンダー(月別)
09 ≪│2008/10│≫ 11
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
最近の記事+コメント
 

人気のエントリー
注目のエントリー
最近のお気に入り
●ゲーム音楽
・「海底神殿」(『QMA4』)
・「TIME」(『メタルブラック』)
・「すべてを乗り越えて」
・「帰路」(上2つ『天地創造』)

●ゲーム
 ・『クイズマジックアカデミー』(主にドラゴン組に留まれるようになりましたが、たまにフェニックスに落ちます。アロエ使い)
・『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』(クリア!)

●マンガ ・JOJOブーム再来中(ただいま第5部)
・藤子・F・不二雄の異色短編集ブームも

販社、販売サイト関連リンク
作曲者・グループ関連リンク

〓制作グループ・会社〓
basiscape
エインシャント
スマイルプリーズ
プロキオン・スタジオ

〓個人〓
 ※工事中

あわせて読みたい

あわせて読みたい

全記事(数)表示
全タイトルを表示
Memo
 リンク、アンリンクフリー(リンクつけるのも外すのも自由ってことです)。
 相互リンクは現在受け付けていませんが、私の気まぐれで勝手にリンクしている場合があります。「迷惑だ」って方は削除します。
 アダルトサイト、宣伝関係のトラックバックやリンクつきコメントは、予告なく削除する場合があります。

 このサイトについて等のご連絡は、 nakazusa◆@◆gm.jpn.org から、2つの◆を抜いたアドレスまで。

 


ブレスオブファイアサウンドBOX

タブブラウザ Sleipnir 公式ページ(上級者向け)

ページランク

人気ブログランキング - ゲームミュージックなブログ・Ver.FC2

この日記のはてなブックマーク数

スカウター : ゲームミュージックなブログ・Ver.FC2





現在の閲覧者数:

 





ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 ゲームブログへ
にほんブログ村 音楽ブログへ

 バナーをクリックすると1票入りますので、宜しければご協力下さいませ。(1日各1票です)
ブログ内検索
iTunes Store

※iTunesが立ち上がります。

 iTunes Store(Japan)

〓最新〓
SaGa Frontier (Original Soundtrack)
SaGa FRONTIER II (Original Soudtrack)
SIGMA HARMONICS (Original Soundtrack)
サイバリオン アーケードサウンドトラック
アルカノイドDS オーディオプラネット
FINAL FANTASY REMIX

LIVE・A・LIVE (Original Soundtrack)

Bahamut Lagoon Original Soundtrack

ルドラの秘宝 Original Soundtrack

すばらしきこのせかい + The World Ends With You - EP

EXIT The First Game Sound Tracks

METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS ORIGINAL SOUND TRACK



〓おすすめ〓
ZUNTATA 1993 LIVE「再生の記憶に関するレポート」

ダライアス

G-ダライアス

レイストーム

Fighter's Impact

Z-REPLICA Vol.1 the NINJA WARRIORS

Z-REPLICA Vol.2 NIGHT STRIKER

ZUNTATA LIVE 1997 -CINETEQUE RAVE-

ZUNTATA LIVE 1998 「guten Talk」 from the Earth

交響組曲「ドラゴンクエストI」

交響組曲「ドラゴンクエストII 」悪霊の神々

交響組曲「ドラゴンクエストIII」そして伝説へ・・・

交響組曲「ドラゴンクエストIV」導かれし者たち

交響組曲「ドラゴンクエストV」天空の花嫁

交響組曲『ドラゴンクエストVI』幻の大地

CRISIS CORE -FINAL FANTASY VII- Original Soundtrack -for Music Download-

METAL GEAR 20th ANNIVERSARY METAL GEAR MUSIC COLLECTION

FINAL FANTASY TACTICS Original Soundtrack

BUMPY TROT オリジナルサウンドトラックス

BUMPY TROT ボーカルトラックス

逆転裁判 + 逆転裁判2

コナミミュージック名曲コレクション (グラディウス&ツインビー編)

コナミミュージック名曲コレクション (パロディウスだ! 編)

コナミミュージック名曲コレクション (沙羅曼蛇&魂斗羅編)

Psyvariar Original Sound Track

サイヴァリア2 オリジナルサウンドトラック プラス

Xenosaga Episode I




ゲーム音楽系イベント
●2008/10/11・12
東京ゲームショウ 2008」
・幕張メッセ
・入場料:1,200円(税込)
 D3パブリッシャー:「ラブ☆ライブ2008」
 タイトー:「ZUNTATA LIVE @ TGS2008」
 バンダイナムコゲームス:「765プロダクション新曲発表会 in TGS2008.10.11」
 マーベラスエンターテイメント:「MMVGAMES スペシャルライブ2008」等


●2008/10/13
「EXTRA HYPER GAME MUSIC EVENT 2008」
・新木場 STUDIO COAST
・5,800円(税込)
・開場15時、開演16時、終演20時


●2008/10/26
「KORG DS-10 EXPO 2008 in TOKYO」
・東京・渋谷 club axxcis
・前売り券1,800円(税込)/当日券2,000円(税込)※1ドリンク付
・開場13:30、閉場18:00


●2008/11/22(土)
「EXTRA HYPER GAME MUSIC EVENT 2008」
・横浜BLITZ
・\4,800(税込)
・開場 15:00 開演 16:00
・オールスタンディング
チケット:チケットぴあ 10月11日(土)より発売開始
ショップサイトリンク


おなじみAmazon


コナミスタイル


スクエニ

HMVジャパン
HMV

セブンアンドワイ
セブンアンドワイ・意外と穴場。近くにセブンイレブンがある人におすすめ。

TSUTAYA online
TSUTAYA

ブックサービス
ブックサービス。1500円以上で送料無料。

GEOの通販サイト「ゲオEショップ」【PC向けサイト】
ゲオ

ユーブック
古本市場


トイザらス・オンラインショッピング
トイザらス。ゲームのみ。

QRコード
QRコード
QMAブログパーツ
応援がてらつけてみました。
フルみっく伝染歌プレーヤー
なんとなく貼ってみました(期間限定)。当然音が鳴りますので注意。
 
ブログパーツ


  • seo